健康情報 Q&A

Q1:薬より健康食品のほうが「食品」だから安全でしょうか?

A1:「食品」にもいろいろあります。天然、自然をうたっている食品でもからだによくない成分を含む場合があります。食品だからといってすべて安全ではありません。


Q2:「血圧高めの方に」と表示された飲み物を血圧が高い人が飲めば、血圧の薬を減らせますか?

A2:血圧が高い人(医師の診断)は血圧を下げる薬などで治療を受けて下さい。その飲み物はおそらく「特定保健用食品」かと思いますが、薬の代わりにはなりません。薬と一緒に飲むこともおすすめできません。


Q3:海外にいる友人からサプリメント(マルチビタミン)をプレゼントされました。食事がとれなくてもこれさえあればOKといわれましたが、本当でしょうか?

A3:サプリメントは食事で足りないビタミンやミネラルを補うものなので、基本となる糖質(ご飯など)、たんぱく質(肉、魚、大豆など)、脂質(油脂類)、ビタミン、ミネラルなどを食事からきちんと摂ることが必要です。


Q4:クロレラの広告チラシを見ると、いろんな病気によいように書いてあります。ぜんそくが良くならないので買ってみようかと思うのですが、治るでしょうか?

A4:クロレラは葉緑素や蛋白質などの栄養素を多く含み、食品としては良いものでしょう。ただし、ヒトが食べて病気が治ったという信頼性の高いデータはありません。ぜんそくなどのアレルギー症状を起こしたという報告がありますので、控えた方がよいでしょう。


Q5:血液が固まらないようにする薬(ワルファリン)を飲んでいて、納豆はダメ、ほうれん草はあまり食べないようにといわれています。緑の野菜が足りないような気がするので、健康食品の青汁なら大丈夫でしょうか?

A5:ワルファリンと食べ合わせてはいけないものは、ビタミンKという成分を多く含むものです。納豆にはとくに多く、ほうれん草や他の緑の野菜にも多く含むものがあります。健康食品の青汁はケール、キャベツなどの野菜を濃縮しているので、少量のほうれん草よりビタミンKが多く含まれている可能性があり、摂ってはいけません。


Q6:最近目が見えにくくなった。チラシにブルーベリーが目にいいと載っていたので、近くのドラッグストアに行ってみた。いろいろなものが並んでいて、どれがいいかわからなかった。栄養機能食品(β-カロテン)とかいてあるものもあったが、こちらの方が効きますか?

A6:栄養機能食品とは国が定めている食品で、β-カロテン(からだに入るとビタミンAになる)の効果が期待されるものです。β-カロテンは、夜間の視力の維持や皮膚、粘膜の健康維持を助ける栄養素です。このβ-カロテンの効果は認められていますが、ブルーベリーが目にいいということについては、ヒトでは確かな試験データがありません。ブルーベリー(ビルベリーという種類も)を食べても効果は期待できないと考えられますので、おいしく食べられるのならβ-カロテン入りの方がいいでしょう。




Q7:健康まつりの時、「野菜は1日350gをとるように」といわれました。一人暮らしなので、いろいろな野菜をとることは難しいです。「18種類の野菜をぎゅっと凝縮した野菜粒」という大きな新聞広告を見ましたが、1日5粒を目安に食べれば350gがとれるのでしょうか?

A7:目にされたのは、小林製薬の「野菜粒」の広告かと思います。野菜をとりにくい場合にはつい頼りたくなりますが、調理法などを工夫してできるだけ野菜そのものをとる方が良いのです。野菜を味わいながら丸ごと食べることに意味があります。上記メーカーの回答では「野菜粒5粒」は野菜22g分に相当するそうです。かりに350gをとるとすると、80粒必要です。


Q8:ドラッグストアに行くといろいろなドリンク剤が売られています。値段はさまざまですが書いてある効能はみな同じようです。どれも気休めのような気がするのですが、効果はあるのでしょうか?

A8:いわゆるドリンクにはいろいろありますが、効能が記載されているのは医薬品と医薬部外品です。これらの基本は、ビタミン類と糖質で、カフェイン、アミノ酸、生薬などが加わり、値段や効果が違ってきます。効果については、気休めというわけではなく、夕方お腹がすいて疲れてきたときに飲めば、エネルギー源としての糖質がとれ、それを燃やすビタミン、気分を高めるカフェインなどの作用で一時的にシャキッとします。この意味で糖質の少ない低カロリードリンクは?です。カフェインと糖質をとってはいけない人もいますので注意が必要です。


Q9:来年から「クスリ」がコンビニでも買えるという新聞記事を見ましたが本当でしょうか?今でもコンビニでくすりを売っているのではありませんか?

A9:現在コンビニで売られている「クスリのようなもの」は「医薬部外品」です。これらは以前医薬品だったもので、規制緩和政策により医薬部外品となったものです。クスリのような効能を書くことができるが、医薬品ではないものです。また、来年6月から制度が変わりますが、今のままのコンビニで「クスリ」を売ることはできません。コンビニが店舗販売業の届けを出し、薬剤師または登録販売者を配置すれば、多くのクスリを売ることができるようになります。


Q10:サメの軟骨ががんに効くと聞きました。兄ががんになったので、すすめたいと思うのですが、本当に効くのでしょうか?また、予防にもなりますか?

A10:「サメにはがんが発生しない」という説があったことから、「サメの軟骨は人のがんにも効く」といわれているようです。しかし、その後の研究でサメにもがんがあることがわかりました。有効性や安全性を専門的に調べている研究所((独)国立健康・栄養研究所)の調査では、「がん治療」に対して効果がなかったという報告は複数見られたが、効果があったとする信頼できる報告は見つからなかったそうです。予防になるという報告もないようです。サメ軟骨は、1つの成分ではなく、蛋白質やコンドロイチン硫酸、カルシウムなどさまざまな成分が混じっており、その含有量や純度などが不明です。胃腸障害、低血圧、高血糖、高カルシウム血症、急性肝炎などの副作用が多数報告されています。糖尿病、肝機能障害、妊娠授乳中の人は摂取を避けること、高カルシウム血症患者には禁忌とされています。


Q11:最近、目が見えにくくなってきました。年だし、運転免許の書き換えもあるので、新聞広告で見たブルーベリーを飲んでみようと思いますが、効果はあるだろうか?

A11:ブルーベリーアイやメニックスベリーなど、名前からしていかにも目に効きそうな商品(このような名称は薬事法違反)が沢山あります。「ブルーベリー=目に良い」という情報が広く浸透しているようですが、「目の不調」の原因はいろいろあり、医師の診察が必要です。
また、一般にブルーベリーと呼ばれていますが、ビルベリーという違った種類と混同されることも多いようです。ブルーベリーは北米大陸に自生する野生種(ジャムやジュース用)と栽培種(生食用)があり、主に食用として用いられます。ビルベリーは、スカンジナビア半島、北部ヨーロッパなどに自生する野生種で酸味や渋みが強く、サプリメント(一部ヨーロッパでは医薬品)に用いられているようです。果実に含まれる成分は両者とも似ていますが、含有量は異なります。目にいい成分は、赤色色素成分アントシアニンであるとされ、ビルベリーに最も多く含まれます。しかし、アントシアニンのヒトでの機能性については信頼できるデータはほとんどありません。多くの効果が期待されていますが、ヒトでは、糖尿病や高血圧性網膜症などによる網膜の病変の改善に対して有効性が示唆されているだけです。


Q12:娘がお通じがよくなると言って、蜂蜜のようなものを毎日コーヒーに入れて飲んでいます。ボトルをよく見たら「オリゴ糖」と書いてありましたが、オリゴ糖ってなんでしょうか?また、害はありませんか?

A12:日常的に糖といえば砂糖やブドウ糖を思い浮かべますが、糖の種類は沢山あります。化学構造として最小の糖(単糖類)がさまざまに組み合わさって、いろんな構造や大きさの糖ができます。オリゴ糖とは単糖が3~20ぐらい結合した小さい糖のグループのことです。よく売られているのはイソマルトオリゴ糖です。イソマルトオリゴ糖は、トウモロコシから作られるものが多いようですが、蜂蜜、味噌、醤油にも含まれます。甘さはありますが、人の腸では吸収されないので、結果的にカロリーはありません。腸内の酵素によって分解されてビフィズス菌などの栄養となり有用菌を増殖させるとされています。ヒトでの有効性については、「おなかの調子を整える食品」という表示で、イソマルトオリゴ糖を関与成分とした特定保健用食品が許可されています。安全性については、摂りすぎあるいは体調により、おなかが緩くなることがあるとされており、とくに有害性の報告はありません。


Q13:スーパーなどで、最近「濃い○○」というお茶類が多く目につきますが、濃いのは体いいのでしょうか?害にはなりませんか?

A13:「お~いお茶濃い味」「伊右衛門濃いめ」「濃いおいしいお茶」「烏龍茶濃い味」「濃い烏龍茶」などなど、沢山の濃いお茶が売られています。濃いと謳っている成分はカテキンやポリフェノールで、お茶の苦みや渋みのことです。器が汚れて嫌われる茶渋タンニンも同じ仲間で、ひとくくりで言えば、すべてポリフェノールです。
苦いポリフェノールは体にいいのでしょうか?
ブームのきっかけは「ヘルシア緑茶」や「カテキン緑茶」などの「トクホ」のヒットでしょう。トクホ(特定保健用食品)は厚生労働省により、その効果の科学的根拠や安全性を審査され、「脂肪を消費しやすくする、体脂肪が気になる方に」と表示することができます。関与成分は茶カテキンですが、痩せる、ダイエットに効くとは表示されていません。これらトクホの茶カテキンの濃さは、100mlあたり150mg程度です。よく見られる「濃いお茶」はトクホではないので効果の表示はできませんし、ポリフェノールの濃さは60~100mg/100mlのようです。ポリフェノールの含有量から見ると、通常のお茶としての飲み方であれば、とくに害はないと思われます。ただし、お茶にはカフェインが含まれており、濃いお茶では含有量が多くなっています。カフェイン中毒や薬との飲み合わせに影響が出ますから、効果を期待して多量に飲むことは避けましょう。


Q14:かぜがはやってきたのでうがいを欠かさず、用心しています。知り合いのおじいちゃんが、かぜの予防には「ルル3錠」が一番だといい、秋口から飲んでいると言います。総合かぜ薬は予防のために飲んでも効果があるのでしょうか?

A14:インフルエンザはもちろんのこと、普通のかぜの原因の80~90%はウイルスによるとされています。その種類は200以上あるといわれており、現在ウイルスに効く飲み薬は、ごく限られたものしかありません。したがって、一般薬として売られている総合かぜ薬にはウイルスに効く成分は入っていないのです。総合かぜ薬の主成分は、解熱・鎮痛薬、鼻炎用薬、咳止め薬で、ほかにそれぞれの効果を高めるための薬剤が加えられています。熱や頭痛、はなみず、せきの症状が出たときにその症状を和らげて安静をはかり、早めに治すことを目的につくられているものなので、症状が出る前から飲んでも予防にはなりません。かぜ薬の成分には薬効の強いものが多く含まれているので、長期間飲むのは危険です。医師からもらう治療薬との飲み合わせも問題になるので、ぜひかかりつけの薬剤師に相談して下さい。


Q15:アロエは昔から「医者いらず」といわれていますが、どのように体にいいのですか?
以前新聞でアロエの害が報道されたような気がしますが・・。

A15:一口にアロエといっても実にさまざまな種類があります。日本各地でよく見られ、健康食品の原料として用いられているのは「キダチアロエ」という種類です。ほかに医薬品の原料として使用され、食品や化粧品への使用が認められていない「ケープアロエ」、主として医薬品の原料としてつかわれるが、薬効成分を除けば食品や化粧品などにも使用できる「アロエベラ」などがあります。
アロエには「医者いらず」などといわれるように糖類、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、酵素類、その他の有用成分が多種類含まれています。このうち有用成分としてヒトで利用されているのはアロインです。
作用は大腸刺激性寫下作用、つまり便秘薬としての作用です。アロエの大量服用は、腹部の疝痛と骨盤内充血を起こすので、妊娠時、月経時、腎炎、痔疾には注意が必要です。長期間の摂取では下痢や低カリウム血症などを引き起こします。キダチアロエは、アロインを多く含むにもかかわらず、規制がないので健康食品に多く使われています。効能効果は謳えない筈ですが、便秘やダイエットに効果的だとしてマスコミに取り上げられたことから、錠剤タイプやドリンクタイプなどの健康食品がもてはやされるようになりました。
国民生活センターに、下痢が止まらないなどの体調不良の苦情や相談が多数寄せられたことから、市販品のアロインの含有量を調査した(2005年)ところ、医薬品並の下剤成分が含まれていたものもあり、少量ずつ試すようにと注意を呼びかけました。「医者いらず」の効果についてはヒトでは明らかではありません。


Q16:ノロウイルスやインフルエンザなど感染症が心配です。除菌スプレーや除菌アルコールティッシュは予防に効果がありますか?

A16:細菌やウイルスを除く方法はいろいろあります。また、その効果の度合いまたは目的に    よって用いる名称や定義も異なります。細菌やウイルスを殺す薬剤を殺菌薬または消毒薬といいますが、効果を現すためには一定の濃度(目的によって決まっている)と時間が必要です。家庭用の抗菌商品や除菌商品は殺菌薬の濃度がずっと低いので殺菌効果は期待できません。過信しないで、できる限り石けんでしっかり洗い流しましよう。


Q17:毎年花粉症に悩まされるので、ドラッグストアで早めに鼻炎薬を買った。家に帰って注意書きをよく見たら、高血圧、心臓病、糖尿病などの人は使用しないようにと書いてあった。去年まで使っていた鼻炎薬には書いてなかったが、どの薬も同じではないのでしょうか?

A17:花粉症(花粉アレルギー症状)にとして売られているOTC薬(一般用薬)は大きく3つのタイプに別れます。
①アレルギー症状を引き起こすヒスタミンという物質のはたらきをブロックする抗ヒスタミン薬を主剤として、アレルギー症状が起こるのを防ぐもの
②起きてしまったアレルギー症状(鼻や目の粘膜のはれや充血)をやわらげる薬剤を主剤とするもの
③アレルギー反応を起こす物質ができにくくする薬剤を主剤とするもの
それぞれの薬には効き方や副作用の違いがあります。②の主成分である「塩酸プソイドエフェドリン」は強い血管収縮作用や交感神経興奮作用があるので、「高血圧、心臓病、糖尿病などの人は使用しないように」という注意があるのです。おそらく昨年まで使用した薬は、①のタイプだったのでしょう。もちろん①にも注意すべき点はあります。③は新に認められた薬で、必ず薬剤師の説明や注意を受けてから使うように決められています。


Q18:酢は昔からからだによいとわれているが、最近ダイエットにもよいと聞いた。試してみようと思うがいろんな酢が売られている。どれが効果的なのでしょうか?

A18:酢を飲むとクエン酸回路が活発にはたらき、脂肪を燃焼させるのでダイエットにいいというのが巷の“神話”のようですが、実はここには大きな誤解があります。酢の主成分は酢酸やクエン酸であり、これらはクエン酸回路の中でエネルギーをつくるときに重要な物質です。
    飲食により取り入れられたクエン酸や酢酸は、腸管で吸収されて肝臓に送られ、血流に乗って各細胞に運ばれてエネルギー源となります。ただし、エネルギー源として使われる(クエン酸回路にはいる)のは、生体がエネルギーの産生を必要とする場合のみです。エネルギーの産生を必要としない場合には、脂肪酸の合成に使われます。つまり、体を動かさないで酢を飲んだだけでは、太る可能性があります。加えて、酸っぱいので蜂蜜や黒砂糖を入れて飲むことが多いので要注意です。いろいろな酢が売られていますが、製法などによって含まれる栄養素や風味が違います。摂取する酢の量は限られていますので、そこから摂取される栄養素は微々たるもので、効果が出るほどの違いはありません。爽やかな酸味は食欲を増し、塩味不足もカバーするので、好みに合うものを上手   に使いましょう。飲み過ぎると胃壁に障害が起こります。


Q19:湿布薬
足首をねんざして痛いので湿布薬を買いに行った。いろんな種類があってどれが合うのかわからない。とりあえず、店の人に勧められたものを買ってきたが、区別や違いがあるのでしょうか。

A19:肩こり、筋肉痛、関節痛、打撲、ねんざなどに用いる「貼り薬」を一般的に湿布薬と呼ぶことが多いようですが、実は目的や剤形によって区分があります。
①主に湿布を目的としたもの:パップ剤(水分を含んで分厚い)
②主に皮膚を通して局所患部へ薬剤を到達させるもの:貼付剤(「ちょうふざい」と読む。薄い絆創膏またはフィルムタイプ)
    ①および②のタイプとも、血行促進作用のある薬剤を主とするものと痛み止め成分を主とするものがあり、筋肉の緊張を和らげる目的で肩こり、筋肉痛などに用いられる他、打ち身・ねんざ、関節痛などの治療のために使用される。使用目的や症状の強弱によっていずれかを選ぶ。さらに冷感タイプと温感タイプがある。温感タイプに発熱作用はないが、トウガラシチンキやノニル酸ワニリルアミドの刺激で血行が促進されホカホカしてくる。刺激が強いので皮膚の弱い人には向かない。使い分けは、打撲やねんざで炎症が強い時期には冷感型、回復期や慢性的な症状には温感型が合っている。目安はお風呂で暖まったときに気持ちよく感じられたら温感タイプに切り替えると良いでしょう。


Q20:禁煙飴
    やはりタバコはやめた方がいいと思うがなかなかやめられないので、せめて本数を減らそうかと思う。スーパーで「禁煙飴」というものを見かけたが、本当にタバコを吸いたくなくなるのだろうか?

A20:タバコによる害は1本吸うごとに確実に増加します。この意味では本数を減らすことは意味がないわけではありませんが、健康被害は本数を減らしても確実に進行します。
    さて禁煙飴の効果ですが、結論から言うと「禁煙」に対する効果はありません。
    喫煙が習慣的になっている場合はニコチン依存症ですから、常に体がある一定以上のニコチンを要求しているわけです。禁煙飴の効果で一瞬喫煙を避けることができても、ニコチン依存症は治りません。現在、ニコチン依存症に対して最も効果が確認されているのはニコチンガムやニコチンパッチ(一般用医薬品として薬局などで買うことができる)です。禁煙外来では飲み薬での治療もできます。薬剤師に相談してみることをお勧めします。


Q21:ルテイン
   2週間前に白内障の手術をしました。黄斑変性もあるといわれています。ルテインが目にいいと聞いたので、サプリメントでとりたいと思うのですが安全性など不安もあります。

A21:ルテインは植物の緑葉、黄色の花弁や果実、卵黄などに含まれ、緑黄色野菜には15~47%含まれています。ルテインは体内では作られませんが、通常は食事によって体内にとり込まれています。白内障が重症化するリスクを減少させる、加齢黄班変性のリスクを減少させるというヒトでの研究・調査がありますから、ルテインを摂取することは有効かもも知れません。
しかし、有効性が認められるのは、いずれも、食事から多くのルテイン摂取した場合であり、サプリメントとして摂取した場合に同じ効果があるかどうかは確かめられていません。
また、サプリメントとして販売されているほとんどの商品では、安全性や含有量などの保証がありません。一部、自主規格・基準を設けて審査しているメーカーの商品もあるので、利用する場合の目安になるかと思います。緑黄色の野菜や果実などを十分にとるのがよいでしょう。薬をのんでいる人は薬剤師に相談してください。


Q22:ドリンクゼリー
スーパーやコンビニなどでプラバッグ入りのゼリーが各種売られています。友人は子供の朝練には欠かせないといっているのですが、からだに良いものなのでしょうか。また、必要なものなのでしょうか?

A22:一般に売られているドリンクゼリーは、成分の面からはいわゆるドリンク剤のゼリーバージョンとも言えます。ただし、ドリンク剤は医薬品(または医薬部外品)であり、ドリンクゼリーは食品ですから、成分量や効能・表示が異なります。エネルギー系、アミノ酸系、ビタミン系、燃焼系(ダイエット系)、カロリーオフ系などと銘打っていますが、必ずしもねらい通りの効果があるとは限りません。含有量の問題があるからです。
ビタミンなどの含有成分は、「栄養機能食品」と表示してあるもの以外では、補給量を満たすものは少なく、ドリンク剤と比べても1/3ぐらいの量しか含まれていません。栄養バランスからいっても、決して食事の代わりにはなりません。子供の朝練前にはしっかりした朝食が必要です。水分補給には役立ちそうですが、さまざまな添加物が含まれており、品質の保証もありませんから、日常的に摂取することは考え直した方が良さそうです。若者のサプリ信仰により、免疫力の低下や栄養不足が起こり、思わぬ感染症にかかる例も報告されています。


Q23:虫よけ
家族でよく野外に出かけるのですが、悩みの種は虫に好かれること。家で庭に出ただけ
でもすぐ刺されます。夏中、虫除けが放せないのですが、直接肌に塗るので大丈夫かと思いながら使っています。害はないでしょうか?

A23:通常使われている虫除けには大きく分けて3つのタイプがあります。主成分はいずれもディートという物質で、本質的には農薬です。出来れば使いたくない成分ですが、商品の種類と必要度を照らし合わせながら、必要最小限に使うということになるでしょうか。
区分
医薬品
医薬部外品
駆除用医薬部外品
医薬品の虫除けは、蚊、ブヨなどのほか、ダニ(ツツガムシ)にも効果がありますので山野に出かけるときに適しています。ガスタイプが一般的ですが、使用部位以外に拡散しやすいので、顔の近くや周囲の子供やペットに注意が必要です。小さな子供に使う場合は、ノンガス、ティッシュタイプを、ガスタイプを使う場合は一旦、大人の手にとってから塗ってあげると良いでしょう。使用上の年齢制限があります。


Q24:マスク
豚インフルエンザ発生の報道を見て、急に心配になり、マスクを買いに行った。
いろんなマスクがある中で、やはり「99,9%カット」と書かれたものに目がいく。
値段は高かったがつい買ってしまった。本当にこれでウイルスが防げるのでしょうか?

A24:誰でもウイルスを吸い込みたくないと考えるでしょう。しかし市販のマスクはそのようには作られていません。つまり、市販マスクは装着者の側から発する飛沫の拡散を防ぐために用いるもの(他の人へ移さない為に使用)。99.9%カットと表示されたマスクの仕様をよく見ると、花粉捕捉率、咳やくしゃみの飛沫の濾過率、あるいはウイルス飛沫の濾過率が99.9%だと書いてあります。ということは、他人の飛沫が乾燥してウイルスのみが空気中を漂っている場合には効果がないことになります。唯一N95と呼ばれる呼吸用保護具(レスピレータ)のみが、装着者を空気中の微粒子(有害物質やウイルスなど)から守るように(自分を守るために)作られています。医療用ですが、これでも微粒子や細菌の吸入を完全に防ぐことはできません。一部市販品にもN95系はありますが、すでに売り切れて店になくなっているようです。


Q25:トチュウ(杜仲)
杜仲がダイエットにいいと聞きました。杜仲茶でも効きますか?

A25:トチュウは中国原産の落葉高木で、日本では長野県などで栽培され、古くから漢方薬の配合生薬やお茶として用いられてきました。グッタペルカという特徴的なゴム質の成分を含んでいます。日本では、樹皮は「医薬品」に区分されていて、食品に用いることは出来ませんが、葉や木部はお茶として用いることができます。主な成分は、グッタペルカと杜仲葉配当体と呼ばれるものです。ヒトで認められている効果は
血圧調節作用
杜仲葉配糖体による効果で、摂取後8~10週間から緩徐な降圧効果が認められ、特定保健用食品(トクホ)として売られており、「血圧高めの方に」という表示が認められています。
肥満や内臓脂肪に対する効果が期待され、ダイエットに効くなどと言われていますが、ヒトでの信頼すべきデータはまだありません。


Q26:OTC医薬品のリスク区分
市販薬の販売制度が変わったそうですね。リスクに応じて3種類に分けられたとテレビで言っていましたが、薬のリスクってなんですか?

A26:市販薬とは、医師の処方せんがなくとも薬局や薬店(店舗販売業)で買える薬で、OTC医薬品と呼ばれるものです。OTC医薬品は長い使用経験があって、作用や副作用が比較的穏やかであることが分かっている薬です。とは言ってもあくまでも医薬品ですから必ず副作用があります。起こりうる副作用の強さや起こりやすさを「リスク」と表現しています。今回の改正ではこのリスクの程度によって3つに区分しました。
第1類医薬品(とくにリスクが高いもの):
OTC医薬品としての使用経験が少ない等、安全性の上から、特に注意を要する成分を含むもの
例:H2ブロッカー配合胃腸薬、一部の毛髪用薬・鼻炎用薬・かぜ薬・水虫薬など
第2類医薬品(リスクが比較的高いもの):
まれに入院相当以上の健康被害が生じる可能性がある成分を含むもの
例:主なかぜ薬、解熱鎮痛薬、胃腸鎮痛鎮けい薬など
第3類医薬品(リスクが比較的低いもの):
日常生活に支障を来す程度ではないが、身体の変調・不調が起こるおそれがある成分を含むもの
例:ビタミンB,C含有保健薬、主な整腸薬、消化薬など


Q27:ゴマ・リグナン、セサミン
最近、新聞などで「ゴマ・リグナン、セサミン」の広告がよく見られます。コレステロール、中性脂肪、高血圧、ガン予防、免疫力向上など何にでも効くように宣伝していますが、本当でしょうか?

A27:食用油や民間の滋養食として古くから摂取されてきたゴマについて、最近、抗酸化物質ゴマリグナンの作用が注目されているようです。ゴマ油の成分としては、脂肪酸として主にオレイン酸(37~49%)、リノール酸(35~47%)などの不飽和脂肪酸が多く含まれ、一般の植物油に比べ、セサミン、ビタミンE、A、B、カルシウム塩を豊富に含んでいます。ヒトでの有効性については、ゴマリグナンの一種であるセサミンに血清コレステロールに対する改善作用など一部のデータがありますが、がんの予防などについてのヒトでの試験は十分ではないようです。
また、ゴマリグナンではありませんが、ゴマ蛋白質分解物(ゴマペプチド含有)には血圧に関する効果が認められ、「血圧が高めの方に適する食品」として特定保健用食品が許可されています。


Q28:うがい薬
豚インフルエンザ予防に、うがいと手洗いを続けています。茶色のうがい薬を使っていますが、最近のどの調子がおかしいことに気が付きました。うがい薬のせいでしょうか?

A28:感染症の予防に、うがいや手洗いは有効ですが、その意味を考えてうがい薬や消毒薬を正しく使いましょう。茶色のうがい薬とはポビドンヨードなどのヨード系うがい薬かと思います。
「うがい」とは口中やのど付近に付着したほこりや細菌、ウイルスをすすぎ出すことです。一般には、水道水、食塩水、うがい薬液が使われます。うがい薬にはすすぎ出す役割の他に「殺菌・消毒」の効果があります。殺菌・消毒とは細菌やウイルスの死滅を狙ったものなので、じつは口内やのどの粘膜の細胞にも障害を与えます。カゼやインフルエンザが身近に発生した場合に、短期間うがい薬を用いることは有効ですが、日常習慣的に用いるとかえってのどの粘膜を傷めてしまう恐れがあります。ヨード系薬剤にはアレルギー症状や甲状腺障害、妊娠中の方に対する注意があります。子供の飲み込みにも注意が必要です。のどの違和感、腫れ、息苦しさなどが現れた場合には、うがい薬の使用をやめて医療機関を受診しましょう。


Q29:香醋
テレビで香醋のコマーシャルをよく見かけます。健康にとても良さそうですが、どんなものなのですか?

A29:香醋とは、中国の発酵熟成という伝統的醸造で作られる米酢のことで、黒酢と同じなのですが、伝統的醸造法や産地などがいろいろあるようです。いずれも、必須アミノ酸全てを含むアミノ酸類を豊富に含むとされており、その含有量は黒酢の3倍、米酢の10倍とPRしています。とは言っても、そもそも「酢」の摂取量を考えれば、含まれるアミノ酸の量はごく少量です。ちなみに、あるメーカーの香醋の1日摂取目安を見てみると、アミノサプリとして売られている商品のアミノ酸量の1/50~1/10でした。アミノサプリでも通常の食事から摂取されるアミノ酸量(たんぱく質として摂られる)よりはずっと少ないのですから、サプリメントからアミノ酸を摂取することは、特殊な場合以外はあまり意味がないようです。ですから、コレステロールの上昇を抑えサラサラ血にする、脂肪肝の予防、疲労回復、筋力向上、脂肪燃焼、美肌などの効果もどうでしょうか?科学的に確かめられた効果はありません。


Q30:日焼け止め
日ざしの強いところに出かけるので、日焼け止めを買おうと思ってお店に行きました。いろいろなものがありましたが、肌が弱い人でも大丈夫でしょうか?

A30:一昔前は健康的に日焼けすることは良いことと考えられ、海では盛んにサンオイルなどを塗っていました。しかし今は、日焼けは極力避けるべきこととされています。
日焼けが悪いとされるのは、太陽光線に含まれる紫外線が、細胞の遺伝子を傷つけるためです。従って、日焼け止めとは紫外線が皮膚に作用しないようにするものということになります。日焼け止めには、紫外線吸収剤を使ったものと紫外線散乱剤を使ったものの2種類があります。紫外線吸収剤を使用したものは皮膚への負担が大きくアレルギーも起こしやすいので、肌の弱い人は、紫外線吸収剤無添加と書かれた「紫外線散乱剤」使用のものを選ぶ方がいいでしょう。最初は少量を塗ってみて様子を見ましょう。
また、商品にはSPF値、PA値というものが表示してあります。
SPF値:何も塗らないときに比べ、肌が赤くなるまでの時間を何倍遅らせるかという数値。数値が大きい方が赤くなりにくい。
PA値:肌を黒くする日焼けを起こすまでの時間を遅らせる程度を表す。+が多い方が黒くなりにくい。+の多いものは紫外線吸収剤を多く含む。
SPFやPAが大きければよいというものではありません。肌が乾燥したり、かゆみや湿疹が起こることもあるので、目的に合わせて選びましょう。


Q31:ダイエット食品の中身
  メタボ検診が始まるまではあまり気にしていなかったのですが、やはり引っかかってしまい
ました。いいサプリはないかとインターネットで探したらいろんなサプリがあり、どれも効果
抜群のようでした。本当に効くのでしょうか。ちょっとコワイ気もするのですが、ダイエット
サプリってどんなものなのですか?
 
A31:
  医学的な「肥満」の定義は別にありますが、一般的にダイエットというと、体重を減らす、
または脂肪を落とすことでしょうか。
 ダイエットを考えるときはまず肥満の原因について考え、その逆を行えばいいことになります。
 肥満とはからだに異常に脂肪が付きすぎた状態とされ、その原因として次の5つが指摘されて
います。
   ・過食  ・不適切な食事のとり方  ・遺伝  ・運動不足  ・熱産生障害

これに対して、ダイエットサプリのほとんどは、過食を防ぐのに役立つとされる食物繊維や
食欲抑制作用があるとされるハーブ類、下剤作用や利尿作用がある植物などを使ったもので、
根本的な肥満の原因に対応しているものはありません。ただし、よく効くと評判のサプリメン
トやダイエットティーの中には不法薬物(副作用の強いやせ薬など)が含まれていることがあ
り、健康障害や死亡が起こったケースもありますから、使用する場合には注意が必要です。


Q32: ダイエット漢方薬の副作用
  お腹の中の脂肪がスーッとなくなっていくようなテレビのコマーシャルを見ました。
 ナイシトールという漢方薬ですが、薬とはいえ本当にメタボに効くのでしょうか?
 漢方薬なら副作用がなさそうなので試してみようかと思うのですが。

A32:
 国の方針により特定検診で腹囲を測られることになってから、「防風通聖散」という漢方薬が爆発的に売れ出しました。テレビコマーシャルを流しているナイシトールが先陣を切りましたが、他にも多くの漢方薬メーカーが追随しました。「防風通聖散」自体は一般薬としてずっと昔から売られていたものですが、テレビのように効くことはありません。
漢方薬だから副作用がないという誤った「常識」とメーカーの非常識な(薬事法にも触れるような)宣伝によって、「防風通聖散」は異常な売れ行きとなりました。
本来、漢方薬は重大な副作用を起こしやすい成分を含んでいるものが多いのです。公表されてはいませんが、今回の大ブームで「防風通聖散」による副作用がかなり起きているのではないかと思われます。最近になって、日本漢方生薬製剤協会という業界団体から「正しく使っていますか?防風通聖散製剤」というリーフレットが出されました。その中で、「ご注意を!この薬で思わぬ副作用が現れることがあります!」と記し、肝臓機能障害、間質性肺炎、偽アルドステロン症の初期症状を示して、症状が出たらすぐに医師の診察を受けるようにと呼びかけています。このことは添付文書にも書いてあることですので、購入時には薬剤師にしっかり説明してもらいましょう。


Q33:核酸
「物忘れが増えたら、要注意!記憶力をいつまでも若々しく保つためには、神経細胞に必要な栄養、特に不足しがちな核酸を補うことが必要!」という新聞の全面広告が目に付きます。核酸は脳の栄養ってほんとうですか?

A33:核酸はすべての細胞のなかに存在しています。細胞の増殖、遺伝情報の伝達、タンパク質の生合成など、生命活動の最も重要な部分に関与する生体成分です。私たちは動物や植物を食事として取っているので、常に核酸を取り入れていることになります。では、核酸のとり方が足りないために脳の老化が進むことがあるのでしょうか?
核酸は、生命にとって欠かせない成分ですから、食べ物に頼ることなく、糖やアミノ酸をもとにして細胞内で過不足なく生合成されています。
食品に多く含まれる核酸は、膵液、腸液中の消化酵素によって、構成成分である糖と塩基に分解され、塩基はさらに酸化、分解されてから吸収されます。
また、脳には血液脳関門という関所のようなところがあり、水、ガス(酸素など)、アミノ酸、グルコースなど、活動に必要な物質以外は脳内への移行は制限され、脳を守っています。
よって、食品中の核酸がそのまま脳に入って核酸として利用されることはほとんどありません。健康食品として、多量の核酸を摂取しても、それは利用されないばかりか、尿酸の蓄積をまねき、痛風を引きおこす恐れもないとはいえません。


Q34:体温計
新型豚インフルエンザの流行で、体温を測るように言われたので、体温計を買いに行った。昔ながらの水銀計の他にいろんな種類の電子体温計が並んでいた。値段もまちまちであったが、どれも同じなのでしょうか?

A34:大きく分けて測定方法として「実測式」と「予測式」があります。
実測式とは、検温部分を腋の下(または口中)に一定時間(平衡温になるまで)挟んだ後に読み取る方式(水銀計、一部の電子体温計)
予測式とは、平衡温に達する前に、コンピュータが計算して予測体温を示す方式(電子体温計)。
検温時間は、実測式では10分(腋の下)または5分(口中)です。予測式では、30秒、60秒、90秒などがあります。
そのほかに、予測式+実測式タイプもあります。予測温をブザーで知らせますが、そのまま10分挟んでおけば実測温になるものです。


Q35:アルコール消毒剤
新型インフルエンザ対策で、建物の入り口には必ずといっていいほどアルコール消毒液が置いてあります。家にも置かなければならないかと思ってドラッグ併設のスーパーに買いに行ったら、いろんな種類のものが置いてあった。どれでもいいのでしょうか?

A35:一般的な殺菌消毒薬にはアルコール系、ヨード系、逆性石けん液系などがあります。薬剤によって病原性細菌やウイルスに対する殺菌効果が違います。この中でアルコール系はウイルスにも効果があることおよび使用後に洗い流す必要がないことなど、使用法が簡便であることから、新型インフルエンザ対策として一気に市場に現れました。確実な殺菌効果を持つためには最適濃度で使用されなければなりません。
医薬品である「消毒用エタノール」ではエタノール76.9~81.4%と決められています。また、医薬部外品としてアルコールジェル(ジェリータイプ)が各種発売されていますが、エタノール濃度は医薬品と同じです。ほかに、アルコール除菌製剤(スプレー、シート、ジェリー)も各種あり、成分アルコールと書いてあるだけで濃度は表示してありません。もちろん殺菌効果はほとんどありません。インフルエンザ対策需要を見越して食品添加物エタノール製剤という業務用の大サイズも店頭に並んでいます。「人体や食品にかかっても心配はありませんが、人体や食品には使用しないで下さい」という奇妙な注意書きが付いています。濃度は57.25%ですので、それなりの殺菌効果はありそうです。
医薬品または医薬部外品のエタノール製剤を薄めないで使用するのが正しい殺菌剤としての使用法です。ただし、頻回に使いすぎると手指が荒れますので、石けん手洗いを優先すべきです。


Q36:乾燥・痒み止め
冬になると毎年悩まされるのが、体中がかゆくなることです。また、足の裏ががさがさして割れてきます。クリームを塗って凌ぎますが、クリームにもいろいろあるようです。どの様なものを選んだらよいでしょうか。

A36:冬もの陳列の売り場には多種類のクリーム類が並んでおり、次のように区分されます。
成分の面から見ると、次のものが含まれています。
①皮膚に水分を集めるもの:尿素
②皮膚の水分を保つもの:ヒアルロン酸、セラミド、スクワレンなど
③かゆみ止め:クロタミトン、ジフェンヒドラミン、リドカインなど
④炎症を抑えるもの:グリチルリチン、アラントインなど
⑤血行促進:ビタミンEなど
製剤として大きく分けると、
乾燥止めを主とするもの(クリーム基剤+①)とかゆみ止めを主とするもの(クリーム基剤+③)があります。実際には①~⑤のいくつかを含んでいるものが多いですので、症状に合わせて選ぶことになります。
足裏のがさがさには①の含有量(20%、10%、5%などがある)の多いものを、痒みが強い場合には③を主剤にしたものなどを選びましょう。なお、保湿効果はクリームや軟膏の基剤そのものによっても異なります。①~⑤の成分を含まなくても十分に保湿効果のある製剤もあります。


Q37:眠くならないかぜ薬
カゼの季節には、どうしても1、2回カゼを引いてしまいます。市販のかぜ薬を飲みますが、注意書きに車の運転はしないように書いてあり、確かに少しボーッとする感じがします。眠くならないかぜ薬はありますか?

A37:市販薬(OTC薬)のかぜ薬とは大部分が「総合かぜ薬」であり、カゼの諸症状(熱、のどの痛み、せき、たん、鼻みず、鼻づまり)すべてに対応できるように処方されています。眠気は、鼻の症状を緩和するために配合されている「抗ヒスタミン薬」の副作用で、人によっては強くでることもあります。「眠くならない」をセールスポイントにしているかぜ薬もありますが、抗ヒスタミン薬が含まれていないので、鼻の症状が強いときには効き目は期待できません。かぜ薬は症状に合わせて選び、注意は守りましょう。


Q38:ビタミンC(喫煙)
ビタミンCはなんとなくからだに良いような気がするし、ビタミンCがタバコの害を防ぐと聞いたので、ヘビースモーカーの夫に飲ませようかと思いますがどうでしょうか?

A38:ビタミンCは、体の中でとても重要な働きをしています。たとえば、コラーゲンの合成(骨格、筋肉、皮膚などの形成)、抗酸化作用(動脈硬化、がん、シミ、シワなどの予防)、免疫(マクロファージ活性化、インターフェロン産生など)、解毒作用(重金属、化学物質など)などに欠かせない成分です。にもかかわらず、ヒトは体内でビタミンCを合成することはできないので、食物から取り入れるしかありません。
といっても、日本人が食事から摂る量で必要量を満たしているので、特別な場合以外は欠乏症になることはないとされています。一方、積極的にビタミンCを摂ることによって健康を維持しようと考える人もいます。今では否定されていますが、「カゼの予防にビタミンC」という説もありました。
また、「タバコにビタミンC」という話もよく聞かれます。タバコ煙に含まれる4000種といわれる化学物質の処理にビタミンCが消費される、タバコの成分によってビタミンCの代謝が早まるなど理由はまだ明らかではありませんが、とにかく喫煙者の血中ビタミンC濃度が非喫煙者より低いことが分かっています。
タバコ1本で25~100mgのビタミンCが消費されるとも言われています。本数の多い人では、生体内に必要な量を維持できない人もいるでしょう。だからといって、禁煙を考えずビタミンCを大量に飲めばよいと考えるのは本末転倒です。ビタミンC不足は受動喫煙でも同様に起こりますので、奥様としては、強く禁煙を勧めつつ、とりあえず自分のためにも、ご夫婦でビタミンCの利用を考えてはいかがでしょう。


Q39:防水スプレー
スキーに行くことになり、友人に「防水スプレーがあると便利」と聞いたので買いに行きました。スプレーには赤字で、”危険!!密閉したところでは、使わないように!”と書いてありました。どんな風に危険なのでしょうか?

A39:防水スプレーの成分は撥水剤(水をはじく物質で、ほとんどはフッ素樹脂)とそれを溶かす有機溶剤、噴霧剤のLPG(液化石油ガス)などです。フッ素樹脂の粒子径が小さく対象物への付着率の低いものは空気中に飛散するので、吸い込むと肺の深部に到達して障害を起こす可能性があります。
中毒症状は咳、呼吸困難、肺水腫、肺炎などの呼吸器症状、嘔気・嘔吐,発熱が主で、吸入後比較的早期(1時間以内)に発症します。密閉した室内や自動車内など、換気が悪い場所でスキーウエアなどに大量噴霧した時に多くの中毒事故が起きています。換気が良好でも発生することがあるので、防水スプレーを使用する時は屋外で風下に向けて噴霧し、吸入しないようにすることが大事です。もし、体に異常を感じたら直ぐに使用をやめ、場合によっては医師の手当てを受けることも必要です。
また、フッ素樹脂配合の製品を使用中及び使用後にタバコを吸ったり、ヒーターの前で使用するなど火気のある所で使用すると、パーフロロイソブチレン(青酸ガスより猛毒)などの毒性の高い熱分解物が発生する危険性があるので、火気にも十分注意が必要です。


Q40:アルコール代謝(酒)
年末年始はお酒の席が多いのですが、すぐ赤くなりドキドキしてきます。あまり飲めない体質でも慣れてくると飲めるようになるというのは本当ですか?

A40:日本人の約半数は、少量の飲酒後に顔面紅潮、動悸、頭痛などの反応を起こします。アルコールは胃からも吸収されますので、すぐに肝臓での分解も始まります。
上のような症状は、分解の途中で生ずるアセトアルデヒドによって起こるのですが、このアセトアルデヒドをさらに分解するための「アルデヒド脱水素酵素」という酵素には、遺伝で決まっている3つのタイプが存在します。
すなわち、普通に働くタイプ(活性型)、活性型に比べて分解が非常に遅いタイプ(低活性型)、および全く働かないタイプ(非活性型)です。後の2つのタイプ(働きの弱いタイプ)の人が飲酒すると、血液中のアセトアルデヒド濃度が上がり、動悸や頭痛を引き起こします。
一般に、酒に強い人はアルコールの分解の速い人(赤くならない人)で、弱い人は分解の遅い人(赤くなる人)と考えられています。また、赤くならない人でも、すぐに酔ってしまう人と、かなり飲んでもビクともしない人がいます。これは脳のアルコールに対する感受性の違いによるものです。赤くなったりしないけれどすぐ酔ってしまうタイプの人は、飲酒を続けると酒に強くなります。脳の神経細胞が機能変化を起こし、感受性が下ってくるためとされています。飲み始めから酒に強い人は、アルコール依存症のリスクが高いといわれています。
Jan-10


Q41:かぜ薬には麻薬成分が含まれているので、スポーツ選手が飲むとドーピングになると聞きましたが本当でしょうか?

A41:スポーツにおけるドーピングとは、競技能力を高めるために薬物などを使用したり、その使用を隠蔽したりすることです。このような不正な効果をもたらす薬物は、「ドーピング禁止物質」として厳しく規制されています。禁止薬物を意図的に使う場合は論外ですが、不注意によるうっかりミスで検査にひっかかってしまう場合もありますので注意が必要です。高校野球選手も対象になりますので、日常生活での意識を高めることが大事です。市販のかぜ薬やせき止め、鼻炎用内服薬などには禁止物質を含むものが尐なくありません。 禁止物質(成分)としては、エフェドリン、メチルエフェドリン、プソイドエフェドリン、麻黄、メトキシフェナミン、トリメトキノールなどがあげられます。次のことを参考にしてください。
・総合感冒薬、せき止め、鼻炎薬、漢方薬には禁止物質であるメチルエフェドリン、エフェドリン、麻黄(マオウ)、プソイドエフェドリン、コデイン、カフェインなどが含まれていることが多い。
・禁止物質が含まれていても、注意書き(添付文書)通りの服用量で、服用をやめてから3日以上経っていれば、陽性になる可能性はほとんどなく、特に心配する必要はない( プソイドエフェドリンは24時間以上)。
・せき止めとして含まれるコデインは、注意書き通りの服用量であれば麻薬とは見なされない。
・カフェインは2004年から禁止物質ではなくなった(監視プログラムに変更)。
・エフェドリンなどの禁止物質を含むサプリメントが出回っている。
・信頼できないサプリメントは絶対に口にせず、人にも勧めない。
・必要がなければサプリメントには頼らない。


Q42:便秘症で、時々便秘薬(センナ)を使っています。最近お腹がぽっこりしてきたので、ダイエットサプリを探しました。「-○○Kgダイエット」などと書かれた商品の表示をみると、「センナ茎」と書いてありました。これもセンナでしょうか?とすると便秘薬でダイエットができますか?

A42:ダイエットとはからだにたまった脂肪を減らすことですが、ダイエットサプリといわれているものの多くは、食事からの脂肪分の排出を助けるとされる「食物繊維」や下剤作用や利尿作用があるといわれるハーブなどを使ったものです。緩下作用のあるセンナ茎がよく使われます。センナはまめ科の植物で、葉は下剤(医薬品)として使われています。センナ茎は下剤成分の含有量が少ないとして「非医薬品」に区分されているのでサプリメントにも使うことができます。一方センナ葉を健康食品に使った場合は薬事法違反となって取締の対象になります。時々違反が見つかります。
さて、医薬品の便秘薬でのダイエットは危険です。基本的に下剤で「大腸の内容物」を体外に出し続けても、体の脂肪細胞は減らないばかりでなく、水分調節が乱れて体液のバランスを崩してしまう恐れがあります。センナ茎を含むダイエットサプリを大量摂取した場合も同じです。


Q43:花粉症・鼻グッツ
またスギ花粉症の季節が巡ってきました。年中行事のようなもので仕方がないとは思うものの、少しでも軽く過ごしたいので毎年あら手の花粉症グッツに注目しています。今年もさまざまなグッツが店に並んでいますが、効くのでしょうか?

A43:花粉症対応の鼻グッツは年々増えているようです。大きく分けて、「スギ花粉を鼻孔に入れないようにするもの」と「鼻孔に入ったスギ花粉を洗い出す」ものです。理屈の上からはいずれももっともと思うのもですが、実際の効果となると確かな検証はされていないので何とも言えません。試してみるしかないというのが実態でしょう。値段はいずれも高めです。
◆スギ花粉を鼻孔に入れないことを狙ったもの:
・クリーム状のものを綿棒や指で入り口から1cmのところまで塗る。原料は精製長鎖炭化水素(より純度の高い白色ワセリン)。市販薬の白色ワセリンよりは少し使用感がよいようです。
・+イオンをもつというジェル状のものを鼻の入り口に塗り、-イオンをもつ花粉などをキャッチして鼻に入れない。原料は、水溶性陽電荷帯電ポリマー。
・花粉などを通さないフルターを鼻孔にセットし、花粉の進入をカットする。
◆スギ花粉を洗い流すことを狙ったもの:
・スプレー式で鼻腔内に噴霧し、流れ出る液をティッシュペーパーなどで拭き取る。原料は、精製水、塩化ナトリウム、殺菌剤。
・洗浄液を鼻の奥に入れ、口に流し込んではき出す。主な原料は、グリセリン、ポリソルベート80、クエン酸など。


Q44:点鼻薬
通年性のアレルギー性鼻炎と言われて点鼻薬が手放せません。スギ花粉の季節は特につらいので、点鼻薬をまとめ買いします。新しい薬も出たと聞きましたが、効くのでしょうか?

A44:点鼻薬はアレルギーの鼻症状に対応する薬剤の組み合わせであり、主成分によっておおむね三つの種類に分けられる。
◆鼻症状:
鼻づまり、鼻水ポタポタ、炎症(むずむず、ほてり感)、くしゃみ、
◆主な有効成分
①血管収縮薬(ナファゾリリン、フェニレフリンなど):
鼻粘膜血管を収縮させ、うっ血による鼻づまりを緩和する
②抗ヒスタミン薬(マレイン酸クロルフェニラミンなど):
アレルギー症状を起こす物質の作用を妨げて症状を緩和する。眠気が出やすい。
③抗アレルギー薬(クロモグリク酸ナトリウム、ケトチフェンフマル酸塩):
アレルギー症状を起こす物質を作りにくくする。
④殺菌剤:
点鼻薬の安定性をよくし、鼻腔内の細菌増殖を防ぐ。
以上のうち、①と②は症状が出たとき使うと効果的。①は使いすぎるとリバウンド現象で、一層鼻づまりがひどくなり、粘膜を傷めるので使用回数を守ること。③は定期的に決まった回数で使用していると症状が起こりにくくなるタイプの薬。新しいタイプとはケトチフェンフマル酸塩を成分とするもので、使用するタイミングなどが合えばより効果がよいと言えます。


Q45:目薬
時々痒みがある程度ですが、一年中目薬を何となく差していました。スギ花粉の時期になって痒みが強くなってきたので頻繁に差していたら、充血がひどくなりました。もっと充血に効く目薬はありますか?

A45:市販の目薬には大きく4つの種類に分けられます。
①涙液型目薬は、涙と同じような成分からなり、目を潤したり、異物を排除する働きがあります。コンタクトレンズ使用時の不調にも使います。どんなタイプのコンタクトにも使えます。
②抗菌目薬は、結膜炎やものもらいなどの細菌感染、あるいは目をこすりすぎた場合などの感染予防のために使う、抗菌剤入りの目薬です。
③アレルギー症状や目の疲れなどによる痒みや充血を緩和する薬剤を含む目薬は、刺激感や清涼感を増すための成分が加えられているものが多い
④疲れ目などに用いる栄養型の目薬は、ビタミン類やアミノ酸、ピント調節剤などを含みます。
③と④の混合タイプのものが最も多いようです。
ご質問の方がずっと使用していたのは、どうやら③タイプで充血を取るための血管収縮剤が強めのものだったと思われます。このタイプの目薬は連用すると、一旦は充血がとれますが、間もなくリバウンドと言って前よりも充血がひどくなる現象が起こります。この目薬の使用を止め、使うのであれば①の涙液型にしてそっとしておいた方がよいでしょう。改善されなければ眼科を受診してください。


Q46:義歯安定剤
入れ歯が合わなくなってきてずっと義歯安定剤を使っています。クリーム状のものやスライム状のものなどいろいろ試しました。先日新聞で亜鉛が基準以上に含まれていたという報道がありましたが、考えてみれば口の中にずっと入れておくし、溶けてなくなるモノもあるので心配です。どんなモノでできているのでしょうか?

A46:入れ歯安定剤(義歯安定剤)の多くは、「密着型」と呼ばれるもので、総入れ歯のような広い義歯床が必要です。しかもプラスチック床が対象です。つまり口蓋(上顎)と義歯床の間に挟んでクッションにするタイプです。接着性はありません。少し堅めのスライム状で、唾液で溶けることはあまりないようです。
もう一つ、「粘着型」というものもあります。クリーム状で唾液に触れると粘着性が出るので金属床でも使えます。接着剤のような力はありません。使用しているうちに溶けて体内へ入ります。新聞で回収報道がされたのはこちらのタイプのものでしたが、現在は売られていません。
両方とも、医薬品ではなく「管理医療機器」という区分になっています。使用されている原材料についての表示はされていません。現時点では原料の安全性は確認されていると思います。


Q47:電子タバコ
電子タバコの宣伝を見かけます。家族がうるさいので、軽い気持ちで禁煙しようかと思っています。ほんとに効果はあるのでしょうか?また害はないのですか?

A47:電子タバコは、専用カートリッジ内の液体を電気的に霧状化し、その微粒子を吸引することでタバコの代りにする製品です。火気を用いない上に燃焼に伴うタールや一酸化炭素、副流煙を発生させないとしています。カートリッジあるいは詰め替え用リキッドは、国内外で多くの種類が製造されていますが、日本ではニコチンを含む製品は薬事法に触れるので流通していません。
したがって、ニコチン中毒になっている喫煙者では、電子タバコで禁煙はできません。もしできた人がいたら、その人は何も使わなくても「やめる気に」になれば止められた人でしょう。電子タバコがキッカケになることはありますので、試してみるのは良いかもしれません。お金は1~2万円だそうです。日本製でもさまざまな成分が含まれていますし、輸入品にはニコチンの他に有害物質が含まれている例もありますので注意が必要です。


Q48:ニコチンガム
元野球選手が宣伝している「離煙パイプ」で禁煙に挑戦してみたが失敗した。知人がニコチンガムでやめたと聞いたのでやってみようかと思うが効果はあるだろうか?

A48:離煙パイプは、紙巻たばこをこのパイプに差し込み、通常通り喫煙するものです。使用するパイプは1日ごとに吸引するニコチンを約3%減らす構造になっていて、最終的に31日目には殆どたばこが要らない体質になっているという理論です。しかし、ニコチン依存の人はニコチンを減らすパイプを使っても、タバコそのものを深く吸うので、理論通りにはいかないのが普通です。
日本でOTC医薬品として売られているニコチンガムは「ニコチン依存症」を自分で治すための禁煙補助薬です。成人であれば薬局・薬店で自由に買って使うことができますが、成功するためには決められた方法に従って使う必要があります。使用できない方もいます。薬剤師などの専門家からきちんと説明を受け、サポートしてもらった人の成功率が高いようです。


Q49:皇潤
皇潤のテレビコマーシャルが派手です。有名人を次々に登場させ、すごく効くようなコメントを言わせています。こんなに効くものがどうして医薬品でないのでしょうか。
また、何でできているのですか?

A49:皇潤の広告・表示は薬事法で禁じられているものに相当します。薬事法では、直接「効く」と謳っていなくても、見た人が効果を連想するような表示は禁じています。
皇潤の原料は、鶏冠抽出物、つまりオスの鶏のトサカで、主成分はヒアルロン酸です。ヒアルロン酸とは、もともと人間の体の中にある成分で、特に、脳・眼球・心臓・骨髄・動脈・子宮・関節などに多く含まれており、体内で大切な働きをしています。
ですから、食事から取り入れられた栄養素を基に体がしっかりと作っているのです。出来上がったヒアルロン酸は巨大な分子量(高分子という)をもつ粘度の高い(ねばねばした)物質です。このようなものはいくら重要な成分といっても、体の外から食べ物(サプリメント)として取り入れることはできません。
なぜなら、ヒトの腸管は巨大分子を取り入れる(吸収する)ことができないからです。ということは飲んでも体(血液)に中に入らないのです。ところが、皇潤の発売元は低分子ヒアルロン酸を使用して吸収を良くしていると言っています。つまりヒアルロン酸を細かく分解して吸収しやすくしているというのです。
しかし、低分子といっても分子量は10,000もあります。このサイズのヒアルロン酸が血液に入ったという確かな証拠はないようです。入ったとしてもそれが必ず元の大きなヒアルロン酸に再合成されるという証拠もありません。それで有名人がなぜ元気になるのかは謎です。
ところで、ヒアルロン酸は、医療用の医薬品になっています。ただし、内服薬ではなく、ひざ関節部に直接入れる注入剤のみが認められています。この理由はもう、おわかりですね。


Q50:酵素
新聞に酵素の広告が大きく載っています。
酵素はからだにとって大事なもので、今の食品には酵素が不足している上に、高齢者では体内の酵素が減っていくそうです。消化・吸収がわるくなり、不純物がたまるので体調が不良になるから、食物酵素を補給しなければならないというのですが、ほんとうですか?
また、どんな酵素がよいのですか?

A50:結論を先にいいますと、広告で謳っている酵素と生命を維持するために働いている酵素とは全く違うものです。広告の酵素とは、本来ヒトのからだとは関係のない、食べ物自体に含まれている酵素(食物酵素)のことで、ヒトが食べた食物を消化・吸収するために必要なものではありません。食べた物は、胃、肝臓、膵臓、腸管などから分泌される消化酵素で分解され、消化管の粘膜組織によって厳しく選択されたのち、吸収されたものだけが毛細血管やリンパ系を経て体の内部へとり込まれます。
体の内部の代謝を司るすべての酵素は、外から補われるものではなく、ヒトが本来もっている遺伝子に基づいて、すべて細胞内部で作り出されます。
体内の必要な情報により活性が調節されたり、特定の遺伝子を働かせたり、止めたりすることによって、酵素の合成量も調節されます。また、有害な細菌や病原菌が細胞の中に侵入しようとするのを防ぐために、腸管には人体最大の免疫機構が備わっています。発酵食品などに含まれる乳酸菌などのような異種タンパクは、粘膜組織に備わっているこの免疫機構によって拒絶され、体内に吸収されることはありません。
ですから食物酵素が、体内に入って有効に働くということはなく、高齢で減少した酵素を補うこともありません。
どの年代の人でも、それぞれの生活における活動量に応じて、必要な量の酵素が供給されますからご心配は無用でしょう。


Q51:スポーツ飲料
例年にない猛暑続きで熱中症の危険が叫ばれています。とくに高齢者は注意が必要と言うことで心配です。熱中症予防のための水分補給にはスポーツ飲料がいいと聞き、大量に確保しました。夫は病気を抱えているのですが、スポーツ飲料を常に飲ませて大丈夫でしょうか?

A51:スポーツ飲料はもともと激しいスポーツをする人の脱水を防ぐために開発されたものです。水分と糖分と塩分のバランスが、スポーツの種類や激しさに応じて考慮され、調整されるそうです。
一方、一般の人が日常生活の中で脱水を予防する場合には、スポーツ選手用のドリンクは適切ではないと指摘されています。
現在、スーパーなどで売られている多種類のいわゆる「スポーツドリンク」は、上の中間を狙ったもので、糖分が多く、塩分が少ない、おいしいジュース感覚のものが多いようです。
熱中症など脱水症状を起こした場合は、身近にある物として利用価値は高いですが、予防的に常時せっせと飲むのはさけたほうがよさそうです。利用するなら、2倍に薄めて、食塩を少し加えると良いという専門家もいます。
脱水症状の治療および予防に用いられるものに、「経口補水液」というものがあります。成分バランスなどについて国際的なガイドラインが出されており、それに沿った商品としてOS-1(厚生労働省許可個別評価型病者用食品:大塚製薬)があります。病院の売店や、調剤薬局等で買うことができます。その説明書きを引用しておきます。

「オーエスワンは、電解質と糖質の配合バランスを考慮した経口補水液です。軽度から中等度の脱水状態の方の水・電解質を補給・維持するのに適した病者用食品です。感染性腸炎、感冒による下痢・嘔吐・発熱を伴う脱水状態、高齢者の経口摂取不足による脱水状態、過度の発汗による脱水状態等に適しています」

高温や高湿度環境での熱中症予防には、のどの渇きを感じなくても、こまめに水分を補給しておくこと。この場合にはとくに糖分や塩分にこだわらなくて良く、食事からの塩分摂取(味噌汁、梅干しなど)を心がけると良いといわれています。ただし、持病のある方、医師の治療を受けている方は、自己判断は禁物です。医師の指示に従って下さい。


Q52:下痢止め
暑い日が続いて、水分の取りすぎか、よくお腹をこわします。旅行に出かけますので、下痢止めを買いたいと思います。
いつも正露丸を使っていますがもっといいものがありますか?

A52:特別の腸の病気などで起こる下痢を除けば、日常生活で起こる下痢は、食中毒菌やかぜのウイルスによって引き起こされる感染症と、ストレスや暴飲暴食、疲れなどによる腸の水分調節不調、また食物によるアレルギーや服用薬の副作用による下痢などでしょう。
発熱などを伴わない場合、大抵は家で様子を見ると思います。感染性の下痢の場合は、おう吐を伴うこともありますが、どちらも生体の防衛反応と考えられますので無理に止めずに、早く体内から出してしまう方が良いとされています。その場合には水分補給(塩分も)を忘れずに、口からゆっくり補給します。受け付けない場合は、病院に行かなければなりません。
その他の下痢は原因によっては長引くこともあり、下痢止めを使うこともあります。医療機関受診が必要なこともありますので、薬剤師に相談してみることをお勧めします。
また、原因によらず、生活上不都合な場合は下痢止めを使わざるを得ないこともあるでしょう。
下痢は腸の動きが異常に早まっている場合や水分が異常に多くなっている場合に起こるので、腸管運動抑制薬(ロペラミド塩酸塩)や収斂薬(タンニン酸アルブミン)が良いと思います。
ベルベリン系の殺菌(防腐)薬を使用しているものもありますが、腸内殺菌はせずに排出することが原則です。下痢止めとして正露丸が古くから使われていますが、同じ理由と腐食性が強いことから、使用は避けた方がよいとされています。


Q53:受動喫煙
喫煙者ですが、周りへの迷惑も気になっています。受動喫煙防止と言う言葉をよく聞きますが、どの様なことに注意すればいいですか?タバコをやめる気はありません。

A53:受動喫煙とは、タバコを吸わない人がタバコの煙が混ざった空気を吸わされることを言います。喫煙者がフィルターを通して吸い込む煙を「主流煙」、火のついたタバコの先から立ち上る煙を「副流煙」と言います。副流煙の方がずっと多量の有毒物質を含んでいます。実際には副流煙は周りに拡がって薄まるために、非喫煙者が受動喫煙によって吸い込む有害物質の量は能動喫煙よりずっと少ないのですが、非喫煙者は有害物質の影響を受けやすいので、健康被害は大きいことが分かっています。
よく「換気扇の下で吸う、ベランダで吸うから大丈夫」と言う人がいますが、煙は室内に入ってくることも分かっています。外で吸ってきても、喫煙直後の人の呼気や衣服、髪の毛から放散される有害物質の害も明らかになっています。つまり受動喫煙防止のためには「禁煙」しかないのです。ご自身の健康のためにもぜひ禁煙を決意して下さい。


Q54:ニコチンパッチ
10月からタバコが値上がりして経済的にきついので、やめようかなーと思って薬屋に行った。テレビでやっていたパッチでやってみようと思って聞いたら、薬剤師がいないから売れないと言われた。値段も高いけどニコチンパッチってどんなものか。効果はあるのか?

A54:値上がりを機にやめようと思っている人は多いようですが、本気で「やめる」と決めれば、誰でもやめられると思います。何もしないであっさり止められる人もいれば、何度挑戦しても止められない人もいます。
ニコチンパッチは、長年の喫煙によってニコチン中毒(ニコチン依存症という病気)になっている人が禁煙するときの「お助けグッズ」です。グッズとは言ってもれっきとした医薬品で、しかも薬剤師の説明や注意を受けて使用する「第1類医薬品」です。ですから薬剤師がいない店(時間帯)では買うことができません。
ニコチンパッチを用いて禁煙する方法を「ニコチン置換療法」と言います。タバコの代わりに、ニコチンを含むパッチを皮膚に貼ることによって、ゆっくりと一定量のニコチンを体内に吸収させて喫煙欲求をやわらげます。OTC薬(市販薬)ニコチンパッチは一定のプログラムにしたがって、6週間~8週間かけて卒煙となります。薬剤師としっかりコミュニケーションを取りながらおこなうことが成功の秘訣といえます。パッチの値段は高いと感じるかも知れませんが、タバコはきっぱり止めることが前提なので、タバコ代はかかりませんし、何より「健康」という大きなオマケが付いてきますので、しっかりフォローしてくれる薬剤師を見つけて下さい。


Q55:胃腸薬
  忘年会シーズンが近づいてきました。飲食の席にあまり強くないのでちょっと憂鬱です。
  テレビコマーシャルで、宴会の様子とともに「食べる前に飲む胃腸薬」と宣伝されている
ものがありますが、本当に飲み過ぎや食べ過ぎに効くのでしょうか?
A55: コマーシャル効果としては抜群でしょうが、薬の本質からいうと疑問があります。
  OTC胃腸薬には服用の時期から大きく分けて4種類あります(添付文書に書かれている)。

     (消化薬系)

(制酸、粘膜修復系)



「食べる前に飲む」というのは③のタイプです。ですから本来、盛大に飲み食いするための薬
ではありません。胃があまり丈夫ではない人が、やむを得ない宴席に臨む前に服用するのは
間違った使い方ではありません。


Q56:トランス脂肪酸
先日の新聞に、あるコンビニがトランス脂肪酸を含む商品を売り場に置かないことを決めたと書いてありました。トランス脂肪酸ってなんですか?からだに悪いものでしょうか?

A56:動脈硬化症などの生活習慣病予防には動物性の油(飽和脂肪酸:固体)をひかえて、植物性の油(不飽和脂肪酸:液体)を摂るようにと指導されてきました。確かにそうなのですが、情報が一人歩きした面もありました。
たとえば、バターとマーガリンです。バターは乳脂肪から作るので体によくない、マーガリンは植物油から作るので健康によいと思わされてきた人も多いのではないでしょうか?ここに落とし穴がありました。
植物油は液体です。液体をバターのように硬くするためには加工が必要です。水素添加という方法ですが、この結果できるものが元の植物油とは異なる性質のトランス脂肪酸 です。トランス脂肪酸の過剰摂取は、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の増加、善玉コレステロール(HDLコレステロール)の減少を招き、心臓病などの疾患を引き起こす要因になることが分かっています。
日本ではマーガリンの生産量がバターの2倍になっているそうですが、実は、マーガリンの他にも、ファーストフード、市販のパン、ケーキ、フレンチフライ、ドーナッツ、クッキー、コーヒー用ミルクやアイスクリームなど多くのものにショートニング(商品の表示)として使われています。
トランス脂肪酸の危険性は、10年以上前から指摘されており、ドイツ、フィンランド、デンマーク、オランダ、アメリカなど欧米では対策が取られています。世界保健機構(WHO)は、摂取エネルギーの1%未満(おおよそ一日摂取量は2グラム強)にするように勧告しました。本来の日本的な食生活では、トランス脂肪酸を含む食品を摂る危険性は低いものでしたが、食生活が変わってきて外食や加工食品に頼る傾向が高くなっています。日本国内の公的な情報等はまだ非常に少ないのが現状です。大手の食品メーカーの中には、危険性を認識し、2006年からのアメリカの表示義務を踏まえて動き始めたところがあるということです。


Q57:睡眠改善薬
65才の女性です。疲れが溜まったときなど、寝付きが悪くなることがあるので、市販の睡眠改善薬を使っています。昨年暮れの新聞で「薬の二日酔い」という記事が目に止まりました。読んでみると、私が使っている薬も関係がありそうで心配です。どうなのでしょうか?

A57:使用中の睡眠改善薬は、抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミンという成分を含む製剤です。かぜ薬を飲むと眠くなる作用と同じ性質を逆利用した薬といえます。
2010/12/22付けの朝日新聞記事は、東北大チームが抗ヒスタミン薬を被験者に飲んでもらい、12時間後の脳内の残存量を、PET(ポジトロン断層)装置を使って比較したというものです。結果は、抗ヒスタミン薬は服用後12時間たっても脳の中から抜けきらず、経験的に知られる「薬の二日酔い」が世界で初めて実験で実証されたとのこと。眠くなるタイプの抗ヒスタミン薬は、12時間後の脳内の残存量が50%もあり、強い眠気と脳の機能障害が起きるレベルだったそうです。OTC薬(市販薬)に使われている抗ヒスタミン薬のほとんどは眠くなるタイプで、睡眠改善薬の成分ジフェンヒドラミンはとくに眠気が強い薬です。
抗ヒスタミン薬は、「眠気」の他に「認知能力・判断力の低下」を起こすことも知られています。眠気を感じなくても、飲酒と同様ブレーキを踏むタイミングが遅れたり、左右の安定性を保つ能力が損なわれて追突しやすいことがわかっていますので、翌日に車の運転や大事な要件などがある場合には、前夜の服用は避けた方がよいと思います。

なるべく体内温度に近い値が得られる場所として腋の下が選ばれていますが、腋の下の
場合、ピッタリと閉じて、外気温や汗などの影響がなくなるまで(平衡温に達するまで)約10分かかります。ですから電子体温計でも水銀計でも同じく10分程度は必要なのです。口中(舌下)、直腸はより早くより正確な体温を測ることができます。
通常は予測式で平熱であることを確認し、体調が悪いときなどは10分間測って実測温を知るのがいいかもしれません。ちなみに、婦人体温計は、最小読み取り目盛りが一桁細かく(0.01℃)、舌下で測ります。

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